夜は自己嫌悪で忙しい
夜は自己嫌悪で忙しいんだ
♩夜な夜な夜な/倉橋ヨエコ
こんにちはこんばんは
今日は人生で一番細い素麺を食べました
どんです
★前回までのあらすじ
ボランティアバイトで見つけたイケメンと連絡先を交換して仲良くなったどん!
ついにイケメンを自分のフィールドに上げる!おわり!
「汚いんで15分外で待っててください!」
家、ついていってイイですか?でしか聞かないようなことを言って、マッハで全てのゴミやらなにやらを収納に隠した。
誰でも、人生で一度はそんな切羽詰まった片付けをしたことがあると思いたい。
イケメガは、多分そんなに片付いてはいないであろう家に上がっても
「結構広いんだねえ」とか「本当に一人暮らしなんだねえ」とか、当たり障りのないことしか言わなかった。
イケメガはやっぱり中身もイケメンで、気遣いのできる大人の男だと内心にんまりしていた。
しかし、事件は2人でテレビを見ているときに起きた。
横並びになって、イケメガが毎週見ているというよくわからないドラマを見ていた時、キュッと私を抱き寄せたのだ。
そこから湿っぽい目で私を見つめて、なんとなしに手を胸の方に持っていこうとしていた。
私は、バチバチにバージンであった。
今となってはどうなってんだと振り払うようなことでも、当時はなにもわからず流されてしまいそうになった。
なにもわからない、わからないけど、イケメガの手は「そういうこと」をしようとしていた。
というかテントは張っていた。
私はそこから、ひたすらヘラヘラしながら「いやいやいやいや」「まあまあまあまあまあ」を良いタイミングで繰りだし、ねっとりと絡み付こうとしてくるイケメガを避ける、作業ゲーが始まってしまった。
どうにか笑顔を絶やさずKを家に返し、鍵を閉めた瞬間、本当に虚しい気持ちになった。
家に異性をあげたらそれだけで性交渉の合意であるというわからん認識があることは知っていた、あげる側も無防備すぎだという批判もあることもしっていた、わからん認識だった。そして、イケメガはそういう人間だとは思えなかった、結果、思いたくなかった。
そこの価値観が決定的にイケメガとは交わらなかった。
イケメガを避けるゲームが終わると同時にイケメガへの好意がサーーーっと醒めていくのがわかった。
「私のことを相手してくれるキラキラ公務員バンドマンイケメン」が私の部屋に来て、「そういうこと」へ必死に持ち込もうとしている顔を見た瞬間
「女子高生にがっつくヤバいおっさん」
へと、メッキが剥がれてしまったのだ。
正に、「星が落ちてきた」瞬間だった。
今までの会話も、ゲストパスも、包み焼きハンバーグもなにもかも幻に思えた。
「星は、手が届かないから星なのだ」
本当にその通り。
自分と同じ土俵に、男と女として立とうとした彼は惨めったらしく映った。
私を女として見て欲しくはなかった、性的なことは一切抜きで特別可愛がられたかった、そもそも「特別」だったのかも、イケメガの雄の顔を見てしまった瞬間からもうわからない。
それからイケメガから連絡が来ることはボチボチあったが、返事を返す気もなくなり疎遠になってしまった。
数年前、LINEを整理したタイミングで多分ブロックしている。
イケメガに近寄りさえしなければ私はイケメガのことを好意的に見ることしかしなかったし、キラキラが剥がれることもなかった。
イケメガのことをオッサンだなんて思いたくなかった、いつまでもキラキラと、手の届かないような場所で相手をしていて欲しかったのにと、あの日連絡先を交換したことを後悔した。
彼が自分の思い通りに動かないコンテンツだったから身勝手に嫌った、と言えばそこまでだが、少なくともあそこで理性をポンと失い、ひとまわりも年下の女に手を出そうとする人はまともではないように思う。十分に冷める要素がある案件というか。
そんな彼のサガも「観賞用イケメン」で終わっていたら綺麗なままだったのに。
そういうわけなので、憧れが強すぎる人には近づかないほうがいい。かもしれない。
憧れは美しい、美しいからそのままにしておいた方がいいことがたくさんある。
結局私も私で「大人な彼に相手されちゃってる私」というスペックが好きだった部分は大いにあるし、彼も「なんか知らんけど女子高生から好かれていて優しくしちゃう俺」が好きだったのかもしれない。
過去にめちゃくちゃ好きだった男のことは知らないけれど、憧れが強い人に近寄りすぎると痛い目を見るかもよ、特に異性間では。という話。
表情豊さんに捧ぐ
どんより