活丼

丼の活動

共有できない悩みが増えていく

小学校後悔してから成長したと思ってたのに

 

♩完璧なし/ハシリコミーズ

 

こんにちはこんばんは

よく食べ物を落としてダメにしちゃう逆SDGsニストになっています。

どんです。

 


今日はひさびさに観劇の予定があった、二本観る予定だったので一本目が観終わったあと、二本目の会場の近くに向かい、開場時間までの時間潰しにスタバに入った。

三連休の真ん中、当然ソファのいい席は全て埋まっており、多少粗末な丸椅子の席に荷物を置いた。

 


「アイスコーヒー牛乳、パウダー多めでお作りしております!」

注文したものを受け取りに行くと、やけに張り切った様子でキラキラした青年が新作のドリンクを手渡してくれた。

弱ペダの真波くんが「俺!生きてる!」と言っている時のような、主人公顔をした青年。

髪をばっちりセットして、眉毛は綺麗に整えられて、目鼻立ちのはっきりした青年。

 

 

 

 


いついってもスタバの店員は誰しもキラキラしていて、人生に何の悩みもなさそうな人間しかいないとは思っているけれど、その中でも彼は格別に特別な顔をしていた。

ふと名札に名前を見やると

「ゆうき」と少し掠れ気味に書いてある名前の下に「今日卒業です!」と小さな文字で主張していた。

そっか、このキラキラは卒業するんですからくるものだったのか。

 


一瞬だけ世界が止まって「どーでもいいですよ」と、平坦なリズムで脳内のだいたひかるがつぶやいた。

私なら、「いや私が卒業するとか誕生日とか、極論死ぬんだとしても世間の人には関係ないことだし」と思ってしまって、バイトを辞める程度のことを不特定多数の人間にひけらかすようにはできないだろう。

現に私はだいたひかるが出てきてしまっているわけだし。

でも、本当は「おめでとうございます」とか一声かけるような人間になりたかった気がする。そしてゆうきは、そんな冷たいことを思う人間がいることはいないと思っていそうな顔をしている。

 


自分!!!!!!!今日で!!!!!!この下北のスタバを!!!!!!やめるんです!!!!!!だから!!!!!!!!一杯一杯!!!!!!!!いつも以上に!!!!!!!気持ち込めてます!!!!!!!!!!感いっぱいにキラキラと手渡されたドリンクに余計な念が込められていそうな気がして、何の変哲もない一杯を飲みたかった気持ちが濁された気になって目が死んだ。

 

 

 

私が腰掛けた席の隣のソファ席に、本来3人掛けの席に密集して6人で座っている男女がいた、その人たちもなぜかキラキラ。(この際密なことなんてどうでもよい)

イヤホンの調子が悪く、一瞬電源を切るために外したら「あいつ〜〜だよなー」「◯◯くんの作ってくれた〜〜が」と談笑の内容が聞こえてきて、この人たちが彼の友達であることがすぐにわかった。

 


しばらくすると「ゆうき」が「待たせちゃって悪いね」とばかりにキラキラやってきて、キラキラと数回言葉を交わして、キラキラ去っていった。

この人は……きっと、ちびまる子ちゃんでいうところの大野くんであろう。

さらに少し時間が経つとまたしても数人「やあ、お前らもきていたんだ」とキラキラ入ってきて、奥の席へと消えていった。

この6人だけじゃなくて更に追加の送別メンバーもいるなんて、ゆうき、なんて陽キャなんだ。

そら主人公顔にもなるわな。な。

ゆうきの友達と思われる人たちはみんな、カップを見つめてニコニコしながら楽しげに話していた。多分ゆうきが特別なメッセージでも書いたのだろう。

ふと、気にもしていなかったがわたしのカップはなにか書いてあるのかと不意に思って見てみた。

 

 

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ひとことも、なにもかいてなかった。

ゆうき、そうだよな。ゆうき。

そういう対人リソースは友人にのみ割きなさい。私だって、もし「ハバナイスデイ!」的なことが書いてあったら陽キャの気迫に飲み込まれて全身蕁麻疹ができてしまっていたところだろうからね。

 

 

 

中高はサッカー部で、シーブリーズの蓋を彼女と交換するタイプの人間だったろうな。

Twitterのプロフィール欄に大学名と自分の生まれた西暦の下二桁書いてそうだな。

東京が地元で、放課後は原宿などに繰り出していそうだな。

3年くらいちゃんと付き合っている子がいそうだな。

杉山くんみたいな、自分より少しブスな人とつるんでいそうだな。

一瞬だけ関わった(関わったともいえないか)

ゆうきの半生を貧相な想像力で妄想する。

 


バイトを辞めるくらいのことを「卒業」と自分で言えるだけの自己肯定感、欲しかったな。

しょーもないな。

 


本当はしょーもないんじゃなくて、バイトをやめるような小さな人生の節目に集まってきてくれる友達がいるような人間になりたかった気がする。

 


そんなことをぼんやり考えていたらゆうきの友達たちは消えていたし、開場時間が近づいていた。氷で薄まったあまりのコーヒー牛乳を一気に飲み干す。

うっす。まっずい。

ごめんね、いろいろ思いすぎたよ。ごめん。

ゆうきさん。ご卒業、おめでとうございます。

明日から、何者として生きるの。

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